患者さんへ腎代替療法選択の考え方

腎不全が進行し腎臓の働きが正常の1割程度まで低下すると、身体に水分がたまってむくみが強くなったり、肺に水がたまって呼吸がしにくくなったり、貧血が強くなって動悸や息切れがひどくなったり、嘔気や食欲低下が出現したりするなど、様々な症状が現れるようになります(このような状態を尿毒症と呼びます)。腎臓の働きがさらに低下すると、最終的には命にかかわる状態となります。そのため、腎臓の働きを補う治療、すなわち腎代替療法の開始を考えなければなりません。

腎代替療法には腹膜透析、血液透析および腎移植があります。いずれの治療法にもそれぞれの特徴や長所・短所があり(表)、患者さん個々の病状、体調、ライフスタイルなどを考慮に入れた上で、いずれかの治療法を選択することが重要です。また、さん (このような考え方を包括的腎代替療法と呼びます:図)腎代替療法の選択においては、関連学会より発行されている『腎不全 治療選択とその実際』という冊子が参考になります。この冊子には、腎不全という病気について、あるいは腹膜透析、血液透析、腎移植といった治療法それぞれについてわかりやすくまとめられています。

個々の患者さんに最も適した治療法を選択する際には、患者さんとそのご家族に腎代替療法について十分に理解していただくだけでなく、医師・看護師などの医療スタッフも患者さんの生活環境や習慣、好み、思いといったものを把握し、協働して最善と思われる治療法を決定するプロセスが望まれます。これは、協働する意思決定(Shared Decision Makingシェアード・ディシジョン・メイキング:SDM)と呼ばれる方法で、十分な時間が必要です。「将来的に透析治療が必要」と言われている患者さんは、担当医やスタッフに早めにご相談下さい。

包括的腎代替療法の概念図
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