カテ-テル挿入術
1. 麻酔の方法
腹膜透析を希望された場合、カテーテル留置のための手術が行われます。手術の際の麻酔法には全身麻酔・下半身麻酔 (脊椎麻酔)・局所麻酔があります。肺や心臓の機能が悪い場合には全身麻酔が難しく、内服薬などの影響で血が止まりにくい場合は、下半身麻酔は避けられます。一方局所麻酔では完全に痛みを取るのが難しいことや、手術手技が多少難しくなるということがあり、それぞれに利点・欠点があります。
2. 手術の方法
おへその横あたりの高さの皮膚を切り (5−10cm)、筋肉、腹膜を切開してカテーテルを入れます。カテーテル先端はおなかの一番深いところ (男性の場合膀胱直腸窩、女性の場合子宮直腸窩; 別名ダグラス窩)に入れる必要があります。そうでないと、おなかにたまった透析液を排液する際に全て出し切ることができず、透析の効率が悪くなってしまう可能性があります。カテーテルを良い位置に入れるため、手術の際に腹腔鏡で観察しながら行うこともあります。また、せっかくカテーテル先端を良い位置に入れても、手術の後でカテーテル先端が移動することがありますので、そうならないようカテーテルを固定する方法もあります。
また、カテーテル出口部の皮膚は常に異物であるカテーテルと触れているため感染を起こしやすく、挿入部と出口部が近いと感染がおなかの中に広がってしまい腹膜炎を起こしやすくなります。このため、カテーテルは創入部より少し離れたところから皮膚の外に出します (皮下トンネル作成) (図)1。
出口部がおなかのしわと重なっていたり、ベルトなどで擦れるようであればさらに感染のリスクは増します。このため、手術の前にあらかじめおなかの皮膚をよく観察し、出口部に最適な位置を決めておく必要があります (図2)。出口部の位置は、肋骨よりも下の腹部が一般的ですが、長いカテーテルを使うことにより出口部を胸部に作成し、下半身入浴を可能にしたり、認知症などでカテーテルを引っ張る恐れがある患者さんの場合、肩甲骨の近くを出口部とすることも可能です。
最初から出口部を作ってすぐに腹膜透析を開始する方法以外に、出口部を作らずにカテーテルを皮膚の下に埋め込んでおき、必要なときにカテーテルを取り出し、腹膜透析を開始するSMAP法という方法もあります。
かつては腹部手術後、多発性のう胞腎、大腸憩室、ヘルニアなどの患者さんでは腹膜透析の導入は困難、避けた方が良いと考えられていました。しかし、麻酔方法や手術の適応には絶対的な正解はありません。担当医とよく相談してみましょう。
内部カフより先端部分までは腹腔内にありますが、内部カフから出口部までは皮下脂肪内を走行し (皮下トンネル)、出口部より対外に出ます。
「PDを始めるあなたへ」 Baxter社より引用